こんにちは、
こめまるです。
僕が高校生から大学生にかけての1970年代後半、探偵・金田一耕助とその生みの親・横溝正史の人気はものすごいものでした。
角川書店から文庫が次々と刊行され、それと連動するように映画化が進み、僕も文庫本をむさぼるように読んだのを覚えています。
あの、おどろおどろしい世界観――人間の業、因縁、血のつながりの恐ろしさ――それがどこか現実味を持って迫ってきたのです。
横溝正史さんが亡くなってもう44年。
「えっ、そんなに経つのか…」と、あらためて時の流れを感じます。
1976年から1979年にかけて、角川映画として横溝正史原作の5作品が次々と公開されました。
いまではそれらが動画配信サービスで見放題なんて、本当にいい時代になったものです。
犬神家の一族 角川映画の原点
1976年、角川書店の新社長に就任した角川春樹氏は、自社の文庫本をより広めるための大胆な一手として映画製作を打ち出します。
その記念すべき第1作が、市川崑監督による『犬神家の一族』でした。
原作と映画の相乗効果を狙った戦略は見事に当たり、角川映画のブランドは一気に全国区に。
「読んでから観るか、観てから読むか」というキャッチコピーが記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
市川崑の演出が生み出す映像美
『犬神家の一族』の魅力は、何と言っても市川崑監督による緻密な画面構成と象徴的な演出にあります。
特に有名なのは、逆さに突き出た死体の足が湖から覗くあのシーン。
無言の湖面、揺らぐ水音、そして不気味に突き出た二本の足――あまりに美しく、そして恐ろしい。日本映画史に残る名場面だと思います。
また、画面に何度も現れる文字や記号的な構図、古美術のような美術セットなど、随所に市川監督ならではの美意識が光ります。
ただのミステリーでは終わらない、**「様式美としての横溝作品」**がこの映画の大きな見どころです。
大野雄二の音楽が作る横溝ワールド
もう一つ忘れてはならないのが、大野雄二による音楽。
のちに『ルパン三世』で名を馳せる彼ですが、この『犬神家の一族』ではサスペンスと哀愁が入り混じる、極めて印象的なスコアを残しています。
不穏なストリングス、不協和音に近い旋律、それでいてどこか懐かしいメロディ――
映像の持つ緊張感と、横溝作品特有の「哀しさ」を完璧に支えています。
まさに“耳で感じる横溝ワールド”とでも言うべき名曲です。
犬神家の一族 名キャストの魅力
金田一耕助を演じた石坂浩二は、原作の「ちょっと風変わりな探偵像」を見事に体現しました。
ボサボサ頭でうつむき、考え込んでは頭をかきむしる――そんな風情を、軽やかに、そして情感豊かに演じています。
坂口良子演じる那須ホテルの女中・はるの素朴でチャーミングな存在感も印象的です。
さらに、狂言回し的に物語を動かす加藤武演じる橘署長の「うん、犯人は分かった!」という名セリフは、後の『トリック』で矢部警部を演じた生瀬勝久に通じるユーモアも感じられます。
犬神家の一族 映画情報
公開:1976年
監督:市川崑/原作:横溝正史/音楽:大野雄二
出演(抜粋):
金田一耕助:石坂浩二
犬神松子:高峰三枝子
野々宮珠世:島田陽子
橘署長:加藤武
那須ホテルの女中・はる:坂口良子
犬神佐清/青沼静馬:あおい輝彦
犬神佐兵衛:三国連太郎
そしてなんと原作者・横溝正史もホテルの主人役で登場!
市川崑監督&石坂浩二主演で、横溝正史の探偵推理小説を映画化。湖面から死体の足が突き出ているシーンなど、一度観たら忘れられない強烈なインパクトを放つ場面が満載!
製薬会社で財を成した犬神佐兵衛が、遺言書を遺して死去。遺言書には佐兵衛の恩人の孫娘・珠子に全財産を相続するとあり、佐兵衛の親族は騒然とする。助力を求められた金田一耕介が犬神家に向かうと、第一の殺人が起こり、奇怪な連続殺人事件に発展していく。
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本ページの情報は2025年6月時点のものです。
最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。
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さいごに
あの頃の横溝ブーム、角川映画の衝撃、そして市川崑監督の世界観。
いま見直しても決して色褪せることなく、むしろ時代を超えた芸術作品としての魅力を放っています。
配信で気軽に見られるこの機会に、もう一度あの“犬神家の世界”へ足を踏み入れてみませんか?
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